日々彷徨
興味を引かれるものにふらふらと吸い寄せられながらウン十年。 過去と現在に出会った物を記録しようじゃないか。 海外ミステリの話が多くなると思うんだけど予断は許さない。
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風少女
中学時代に憧れていた同級生の事故死を知らされた主人公が、その「似合わない死に方」に疑問を持ち、故郷の町での調査を始める、甘くない「青春ミステリ」。1990年に発刊されたものに加筆・修正を施した再刊。



風少女


樋口有介
創元推理文庫(2007)

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東京の大学に通う斎木亮は、父の危篤の知らせを受け実家のある前橋に帰る途中、かつて憧れていた同級生・麗子の妹である千里に声をかけられる。さして面識も無いのに亮に絡む千里は、別れ際に麗子が死んだことを告げる。

彼の帰りを待つことなく死んでしまった父との対面を済ませた後、麗子の事故死を知らせる新聞記事を読みながらつぶやく。「似合わないんだよな、風呂場で溺れて死ぬのが」。亮は同じく麗子の死に疑問を抱く千里と共に事件の真相を調べるために動き出す。それは彼の心の中に大きな存在として残っていながらも、実生活からは消えてしまった麗子のここ数年の生き方を知ることであり、彼女を取り巻くかつての同級生たちの生き方を解き明かすことでもあった。彼の知らないところで、彼女と同級生たちの間で何が起こったのか。果たして麗子は亮が心の中で思い描く憧れの人そのままなのか、あるいは、、、

タイトル名と紹介文の「若者たちの軌跡を活き活きと」とか「青春ミステリの決定版」という表現にかなり引き気味で、青くさい本はいやだなあと思っていたが、いざ読んでみるとそういったくささは全く無く、むしろ地方都市の重い雰囲気と主人公のどこかさめた視点からの描写があいまって大人も十分読めるミステリとなっている。

特に主人公の言動は大学生というよりも30過ぎの素人探偵といっても良い雰囲気である。物語は主人公による一人称の語りで進められるが、よくありがちな、感情をいちいち文字で説明し過ぎるようなところも無く、少しシニカルな語り口で淡々と物語が進んでいく。

彼はかつて憧れていた麗子がそんな死に方をするはずが無いという、さして論理的ではない理由にこだわり、事件を掘り返すが、情熱的な思い入れや確信とは程遠いものである。大体、中学時代にのぼせ上っていたが、結局ふられてしまった女性のことを完璧に理解しているなどということがあるはずも無く、むしろ自分が思い描いていた彼女の人物像が果たして真実のものであったのか、それとも単なる虚像であったかを確かめるために動いている。

地方の若者にとって、ある年齢層においては都会、特に東京に出ることがひとつの価値であるとすれば、地方に出ることなくとどまる者、都会に出たがなんとなくその日暮をしているもの、そして再び故郷に帰ってきた者、それぞれが様々な思いを抱えている。そうした人たちが何かのタイミングで故郷に集まり再び接点を持ち、変わらない部分と変わってしまった部分を探りあう、そんな小説である。

1990年に発刊されたものに加筆・修正を施した再刊である。
このエントリーは書評ポータル「本が好き!」から頂いた本の書評です。



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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

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2010/03/26(金) 21:11:50 |
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