日々彷徨
興味を引かれるものにふらふらと吸い寄せられながらウン十年。 過去と現在に出会った物を記録しようじゃないか。 海外ミステリの話が多くなると思うんだけど予断は許さない。
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シグマ最終指令(ロバート・ラドラム)


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シグマ最終指令

ロバート・ラドラム
山本光伸(訳)
THE SIGMA PROTOCOL (2001)
Robert Ludlum


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国際謀略、追われる男物

スパイ物一筋といった感じのこの作者、最近ではマット・デイモン主演の「ボーン・アイデンティティー」、「ボーン・スプレマシー」の原作者といった方が通りがよいか。この手のハードな原作物の映画化はだめだめになることが多いが、両作とも映画としても結構よかった。

さて、この作品、スケールの大きな謀略物である。主人公の男、ベンは旅先で15年振りに再会した旧友にいきなり殺されかけ、なんとか逆襲して生き延びるが、それを皮切りに、わけもわからぬまま行く先々で命を狙われる。一方、もう一人の主人公の女、米国のエージェントであるアンナは、理由を明らかにされぬままとあるリストに載っている老人たちの死因について再調査を命じられ、こちらもわけもわからぬまま世界中を飛び回りながらも地味な調査を続けていく。読者も含めてなかなか謎が明かされぬまま話は進み、下巻に入ってようやくこの主人公二人がめぐり合うあたりから男を追うもの、女が追うものの正体がおぼろげに見えてくる。それは第2次大戦における連合国と枢軸国、そして冷戦下の東西陣営という枠組みを超えて全く別の論理で世界をコントロールしようとする秘密結社であった。

こう書くとなかなかの大風呂敷であるが、荒唐無稽な感は全く無く、これに近いことは行われていても不思議が無いと感じさせるのはさすがの力量である。

この主人公、もちろん普通のサラリーマンなので、スパイと暗殺者のうごめく世界では唯の素人なのだが、意外な力を武器にしてアンナを助ける。それはひそかに鍛えた筋肉でも空手の技でもなく、金の力である。サラリーマンといっても投資会社のボンボン役員なので、金とコネはある。この力を使って米国エージェントであるアンナを出し抜く程の情報を仕入れて、秘密結社に一歩先んじることに成功する。このあたりが単なる冷戦、あるいはそれ以後の国際関係における情報戦、といった普通の国際謀略物とは違った物差しを使って構成されている本作品のユニークなところを示している。この物差しにおいては米国エージェントといえども古いタイプに属してしまう。

冷戦下の東西対決というモチーフ自体が崩壊して以降、国際謀略物も背景の激変に伴い変化を余儀なくされたが、古い世界で巨匠と呼ばれたラドラムはたとえ背景が変わろうともオリジナリティのある枠組みを作品の中で作り上げて読者を巻き込んでいくのは流石である。かなり晩年の作品であるが、力の衰えは一切感じられず、ぐいぐいと引っ張られる心地よさを味わくことができる。作者の他の作品同様、文庫にして上下2巻の大作だが、全く飽きさせない。かなり冷徹なストーリ展開と冷酷な描写が多いのだが、この作品はかなり読みやすいと思う。ちょっとあまりにもリアルなのは苦手だけど、甘っちょろいご都合主義は御免、という人にもお勧めである。

しかし、作品に出てくる伝説の暗殺者、どこまで逃げても男を追い詰めていくのは流石だが、何回も殺し損ねてるのはちょっといただけない。無論主人公を殺してしまっては話が終わってしまうので、結局殺されてしまう損な役割だというのはわかるんだけど、素人相手にちょっと失敗しすぎじゃない?

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

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