日々彷徨
興味を引かれるものにふらふらと吸い寄せられながらウン十年。 過去と現在に出会った物を記録しようじゃないか。 海外ミステリの話が多くなると思うんだけど予断は許さない。
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正義のミカタ ~I'm a loser~
三流大学に何とか滑り込んだ主人公は、わけのわからないまま、とある研究会に連れ込まれる。その名は正義の味方研究部。高校時代までずっといじめられっこだった彼は、はたして清く正しい正義の味方になれるのか?



正義のミカタ
~I'm a loser~



本多 孝好
双葉社(2007)

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亮太は入学したての大学で、トラブルに巻き込まれているところを同級生のトモイチに助けられる。高校まで一貫していじめられっこで友達などいなかった亮太は、トモイチから「友達」と呼ばれてのぼせ上がってしまい、ふらふらと誘われるまま、とあるクラブに入会することになる。その名も「正義の味方研究部」。

このふざけた名前のクラブはヒーローを研究する会などではなく、文字通り自らが正義の味方となり、大学の人々の安全と幸福を守ることを目的とする、大真面目に正義の味方を実践するクラブであった。当然誰もが部員になれるわけではなく、なんらかの秀でた特技、いわば必殺技がないと部員として認められない。あるものは腕力、あるものは情報収集力、そしてあるものは不屈の精神力。トモイチは高校時代インターハイ3連覇という即戦力でスカウトされていたのだが、亮太の年季の入った殴られ方を見て、只者ではない動体視力と身体能力を見て取り、彼をクラブに誘ったのである。亮太はいじめっ子に殴られ続ける中で、どうしたら殴る側が納得がいき、これ以上殴ろうと思わず、しかも同時に自らのダメージを最小にする最良の殴られ方を自然と実践しており、そのためにはパンチから最後まで目をそらさず、思ったところにパンチをもらうという高等技術を体得していたのである。まさにマイナスパワーもきわまれり、といったところ。

無事入部を果たした亮太は個性的な先輩達とともに、大学における正義の味方としての活動をはじめ、大学にありがちなトラブルの解決に取り組む。そんな中、亮太とトモイチは、ある同好会への「潜入捜査」を命じられる。なにを捜査するのかは教えられないまま同好会へ入った亮太は、そこでぱっとしない先輩、間(はざま)とともにイベント企画をおこなうこととなる。派手なイベントを企画する他のグループと違って文化講演会を担当している間はイベント同様地味で目立たない存在であるが、亮太はそんな間に自分と似た匂いを感じる。

物事を深く考えない人々は幸せである。これがこの本を読み終わったときの最初の感想。亮太は生来の性格なのか、いじめられっこ大ベテランのキャリアからなのか、あらゆることを受け流すことができず、さまざまに思い悩む。トモイチと知り合い、正義の味方研究会に入会したことにより、高校までの暗く救いの無い日々が一転してクラスでも一目置かれることになり、恋の予感もする楽しいキャンパスライフになったというのに、単純に幸せに浸ることができず、周りの人々や出来事のことに思いをめぐらす。そして考える、これで自分はいいのかと。

こだわりを捨て、物分りの良い人になることが大人になることだとすれば、大人への入り口とも言える大学に入った途端に、それまでただトラブルから目を背け、亀のように首を引っ込めて嵐が過ぎるのを待っていた主人公が、納得行かないままの自分をほっておけず、みずからのこだわりを貫き通す信念の人になってしまった様は滑稽ともいえる。しかし、彼は感じているのだろう、自らあるべき姿への努力を始めた以上後戻りはできない、ここで思考停止してしまったらまたもとの木阿弥だということを。

いじめられっこが、かけがえの無い友人を得ることにより、いままでの自分を抜け出し、新しい可能性と希望に満ちた人間に生まれ変わる爽快なストーリを期待するなら読むのを止めておいたほうがよいだろう。あるいは半分くらいで読むのを止めるか。そこまでならこぶしだけで生きてきた野生の男であるが、それでいて古風な雰囲気を漂わすトモイチと、いじけた中にも自分をごまかせず器用になりきれない亮太が織り成す飾り気の無い友情は青春小説として心地よい。しかし、世の中そんなに単純ではない。考えることを止めない限りは。

今の世の中、多くの悪は絶対的な悪ではなく、それぞれの立場と弱さが織り成す相対的なものである以上、その対極である正義も、絶対的な正義としては存在し得ない。怪獣の吐く炎であろうがウルトラマンのスペシウム光線であろうが直撃されたら家は燃えるし、踏まれたら死んでしまう。そんな力なく逃げ惑う人が多数いるという現実から目を背けることができない亮太。明るい青春小説のさわやかさは無いが、立場や視点を変えて考えるということの大切さ、そしてしんどさ、つらさを教えてくれる小説である。

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このエントリーは書評ポータル「本が好き!」から頂いた本の書評です。






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テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

風少女
中学時代に憧れていた同級生の事故死を知らされた主人公が、その「似合わない死に方」に疑問を持ち、故郷の町での調査を始める、甘くない「青春ミステリ」。1990年に発刊されたものに加筆・修正を施した再刊。



風少女


樋口有介
創元推理文庫(2007)

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東京の大学に通う斎木亮は、父の危篤の知らせを受け実家のある前橋に帰る途中、かつて憧れていた同級生・麗子の妹である千里に声をかけられる。さして面識も無いのに亮に絡む千里は、別れ際に麗子が死んだことを告げる。

彼の帰りを待つことなく死んでしまった父との対面を済ませた後、麗子の事故死を知らせる新聞記事を読みながらつぶやく。「似合わないんだよな、風呂場で溺れて死ぬのが」。亮は同じく麗子の死に疑問を抱く千里と共に事件の真相を調べるために動き出す。それは彼の心の中に大きな存在として残っていながらも、実生活からは消えてしまった麗子のここ数年の生き方を知ることであり、彼女を取り巻くかつての同級生たちの生き方を解き明かすことでもあった。彼の知らないところで、彼女と同級生たちの間で何が起こったのか。果たして麗子は亮が心の中で思い描く憧れの人そのままなのか、あるいは、、、

タイトル名と紹介文の「若者たちの軌跡を活き活きと」とか「青春ミステリの決定版」という表現にかなり引き気味で、青くさい本はいやだなあと思っていたが、いざ読んでみるとそういったくささは全く無く、むしろ地方都市の重い雰囲気と主人公のどこかさめた視点からの描写があいまって大人も十分読めるミステリとなっている。

特に主人公の言動は大学生というよりも30過ぎの素人探偵といっても良い雰囲気である。物語は主人公による一人称の語りで進められるが、よくありがちな、感情をいちいち文字で説明し過ぎるようなところも無く、少しシニカルな語り口で淡々と物語が進んでいく。

彼はかつて憧れていた麗子がそんな死に方をするはずが無いという、さして論理的ではない理由にこだわり、事件を掘り返すが、情熱的な思い入れや確信とは程遠いものである。大体、中学時代にのぼせ上っていたが、結局ふられてしまった女性のことを完璧に理解しているなどということがあるはずも無く、むしろ自分が思い描いていた彼女の人物像が果たして真実のものであったのか、それとも単なる虚像であったかを確かめるために動いている。

地方の若者にとって、ある年齢層においては都会、特に東京に出ることがひとつの価値であるとすれば、地方に出ることなくとどまる者、都会に出たがなんとなくその日暮をしているもの、そして再び故郷に帰ってきた者、それぞれが様々な思いを抱えている。そうした人たちが何かのタイミングで故郷に集まり再び接点を持ち、変わらない部分と変わってしまった部分を探りあう、そんな小説である。

1990年に発刊されたものに加筆・修正を施した再刊である。
このエントリーは書評ポータル「本が好き!」から頂いた本の書評です。



テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

代替エネルギーの行方
代替エネルギーの行方

伊藤洋一のビジネストレンド (日経ネットBizPodcast)
第73回「代替エネルギーの行方」 2月19日公開

先週、「地球温暖化をくいとめられるか?=バイオガソリンの販売開始」と「エタノール需要急増で果汁飲料値上げ」という二つのニュースがほぼ同時に流れた。結果として新エネルギーと食糧問題というひとつのカテゴリーが認知され、広くテレビでも取り上げられることとなったわけだが、それを見てこの PodCast を思い出した。ここではブラジルのバイオエタノール政策、アメリカのトウモロコシ生産現場の状況等から、本来食料として消費されるべき穀物が工業用に回されることにより何が起こるかということを説明し、疑問を呈している。

環境問題というのは社会全体のシステムに関わる問題であるだけに、局所的な損得勘定だけではなかなかうまくいかないという好例であろう。いろいろな事実、データをもとに広く影響を予測しながら進めていく必要がある。そのためには感情にとらわれることなく、客観的な判断が必要なのだが、なかなか難しい。ともすれば経済のエゴと感情的な省エネ・リサイクル論に振り回されてしまう。

伊藤洋一氏はテレビ等でもコメンテータとしてよく見かけるが、その割には言っていることもまともで、主張も大体一貫している。すべての主張に賛同できるかどうかは別問題であるが、経済動向の着眼点をいろいろわかりやすく提示してくれるので、役に立つ。「伊藤洋一のRound Up World Now!」とあわせておすすめである。


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